■ ノンコンプライアンスの問題
はじめに
医療従事者が直面している最大の障害は、毎日の服薬指導を
守らない患者(ノンコンプライアンス)の問題と言えます。
では、どうにかしてノンコンプライアンスを改善することは出来ないでしょうか?
3つのステップからなる RIM MODEL を活用することで、これを改善
するためのカウンセリングをより効果的に実行することが出来ます。
RIM MODEL
このモデルは患者に対する服薬指導を3つのステップに分けて
考えたものです。
- 第1ステップ:ノンコンプライアンスの可能性を認識すること
(Recognize)
- 第2ステップ:考えられる原因を把握すること
(Identify)
- 第3ステップ:問題に対処すること
(Manage)
それからコンプライアンスが維持できているかどうかを確認します。
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第1ステップ:Recognize
最初のステップは患者と会話する前に始まります。
患者プロフィールに目を通して、使用中の薬剤や処方されている
用量と再調剤の頻度を調べたり、薬物の血中濃度に注目したり、
あるいはクスリの使用間隔や使用方法を知るために、コンピュータ
によるコンプライアンス管理システムを利用したりすることにより可能です。
この種のデータは客観的証拠と呼ぶことが出来、多くの場合、
もっともはっきりと認識できるノンコンプライアンスの兆候です。
最重要質問とSHOW AND TELLを効果的に活用することで、
コンプライアンスの問題を探りだせるような対話を行うことが
可能です。
このような対話の際に得られる情報は主観的証拠と呼ばれています。
服薬指導の間に主観的、または客観的証拠のどちらかでも
見つかった場合は、ノンコンプライアンスの有無を確認して
原因を探ります。
∇ 主観的証拠の場合
次の映像を見てみましょう。
実際のところ、ノンコンプライアンスに関する問題の存在を
示してくれるのは、患者の声やボディーランゲージから
感じ取れるかすかな兆候であることが多いのです。
このような間接的兆候を“Pinkの旗( Pink Flags )”と呼びます。
赤旗が明らかな危険信号だとすれば、
Pinkの旗はノンコンプライアンスかも
しれないという間接的なヒントになります。
それは疑いや不信感、あるいは事実をよく把握してい
ないことを示す言葉であったりします。
次の映像を見てください。
上でみたように、主観的証拠が見つかるケースでは、
患者の方からノンコンプライアンスの問題をほのめかして
くれるものです。
あとは反射的対応でさらに情報を引き出せばよいのです。
反射的対応に患者がどのように答えるかによって、
開放型質問などで追求していきます。
大切なのは、対話中、批判的態度を見せないようにすることです。
∇ 客観的証拠の場合
患者の方からこの問題を口にしていないわけですから、
薬剤師のほうでノンコンプライアンスの可能性に
ついて切り出さなければなりません。
では次の2つを比較してみましょう。
パターン1
パターン2
大切なのは会話中、批判的態度を見せないようにすることです。
パターン1では患者さんを批判しているように聞こえてしまいます。
客観的証拠に関する情報あるいは説明を求めるための方法として
協力的コンプライアンス調査と呼ぶ方法があります。
この方法を用いれば、批判がましくないやり方で単に気がかりなこと
として、あるいは見たとおりの事実の描写として証拠を
共有することが出来ます。
パターン2のようにコメントに“私”を付けることで
批判めいた感じをさけることができるのです。
一見、ノンコンプライアンスに見えても正当な理由があるかも
しれません。例えば、
再調剤に来るのが遅れたのは、医師が容量を変えたのかも
しれませんし、別の薬局で再調剤したためかもしれません。
コンプライアンスの問題が認められた場合、その原因を把握
する必要があります。
次に第2ステップに進みましょう。
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第2ステップ:Identify
ノンコンプライアンスの原因は知識不足、実践上の障害、
考え方などさまざまです。
知識不足は、患者が薬の使用法について誤った情報を
与えられている場合におきます。
例えば、液体の抗生剤を飲むのではなく耳につけるものと
勘違いしている患者さんの例をみてみましょう。
これは最重要質問やSHOW AND TELLなどで確認することが
できます。
実践上の障害は支払い能力がない場合から身体的障害、
物忘れや副作用までさまざまです。
脅迫的にならないように心がけながら質問することで、
あるいは反射的対応で患者の不安に理解を示すことによって
確認できます。
副作用が原因であれば「もっと詳しく聞かせてください」と
いうような開放型の言い方は話を始めるのに有効な方法です。
また、副作用が発生した部位、症状の程度、時期、兆候、
関連症状、緩和要因、背景などの具体的な質問をすることで、
それまでにわからなかった問題の詳細が見えてきます。
考え方の障害とは、その薬を使うことへの抵抗感です。
原因となるのは、診断結果を受け入れていない、自分で
なんとかコントロールしたいと考えている、健康感が違う、
治療方法に不満をもっているなどです。
患者の治療法に対する心情に的を絞った反射的対応や開放型の
質問によって確認することができます。
ノンコンプライアンスの原因を突き止めたら、次に対処するための
最善策を考えなければなりません。
第3ステップに進みましょう。
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第3ステップ:Manage
原因がわかれば解決策もわかるものです。
知識不足
情報を提供して誤解を正す。
患者向けの添付文書、説明書・個別のデータに
口頭で補足説明をする。
実践上の障害
扱いやすい包装にする。
カレンダー、ピルケース、開閉を記録する電子キャップを採用する。
副作用
症状の程度によって対処の方法が決まる。
重篤な副作用と疑われる場合は速やかに
担当医に知らせなければならない。
考え方の障害
患者の思い込みを正し、治療に積極的に
参加するようにしむけていくことが大切。
患者と服薬計画を話し合いその目標と責任に
ついて双方で合意すること、健康とクォリティーライフの向上を
励みとして利用することが患者にやる気を起こさせる有効な方法である。
また自分の恐怖感や不安が認められ充分に注意が払われていると
患者が感じた場合、コンプライアンスが改善されることも
明らかになっている。
考え方の障害にうまく対処できるかは、患者と薬剤師が
強い信頼関係を築くことにかかっている。
それでは実際にどのようにRIM法を応用できるでしょうか。
■RIM法を使用していない場合 (間接炎のクスリ)
(1分25秒)
■RIM法を使用した場合@ (間接炎のクスリ)
上のRIM法を使用していない場合と比較してみましょう。
■RIM法を使用した場合A (降圧剤のクスリ)
■RIM法を使用した場合B (発作のクスリ)
■RIM法を使用した場合C (偏頭痛のクスリ)
RIM法を使えばどれだけ違ったものになったかお分かりですね。
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